史跡紹介
【江口君堂】西行法師と歌を詠みあった女主人紗の物語が残る
探訪日:2015年11月29日
掲載日:2016年2月1日
持っていた本に載っていたので興味があり江口君堂を訪ねました。
正式名称は宝林山普賢院寂光寺です。
由緒
1167年、西行法師が天王寺への参拝途中に江口で時雨にあい、宿を求めたところ、出てきた女主人 遊女妙に断られました。
そこで西行法師は次の歌を詠んだのです。
世の中を厭ふまでこそ難からめかりのやどりを惜しむ君かな
(世俗を避け出家するのは難しいですが、仮の宿を貸すことくらいをあなたは惜しむのですね。)
すると紗は次の歌で返しました。
世を厭ふ人とし聞けばかりの宿に心とむなと思ふばかりぞ
(あなたは出家されたと伺いましたので、仮の宿(この世への未練)に執着してはいけないと思っているだけです。)
軽妙な返しに西行法師はやりこめられました。
そして二人は意気投合し、その晩は語り明かしたそうです。
どちらの歌も「新古今和歌集」に載っています。(978番と979番に収録)
その後、この歌が縁となり妙は仏門に入ります。
妙が亡くなった後、江口の人々が冥福を祈って建てたのが、江口君堂だと言われています。
地域の人々の心を動かし現代にも語り継がれていますが、歴史の表舞台に出ない小さな物語。
その一端に触れることができただけでも訪れてよかったと思いました。
また、逸話では「紗」は没落した平資盛の娘だと言われています。
資盛と言えば壇ノ浦の戦いで自害した人物です。