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なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか
なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか
日本には多様な神を祀った神社が存在します。
古来より信仰を集めている神や鎮魂のために人が神となり祀られたなど、祀られるようになった経緯も様々です。
本書ではどのような経緯で信仰を集め祀られるようになったかを、特に数の多い11の神社を対象にその由緒をまとめています。
何気なく自分の周りに存在する神社のその由緒を知ることで神社に対する思いなどが変わるかもしれません。
掲載日:2016年3月20日
所感
神社は古来から現在まで同じ形を留め、同じ式典を行っていたわけではありません。
特に神社と仏教との関わりが大きく、神仏習合や神仏分離などを経て、今日の姿を留めています。神を祀る日本の神道は仏教と異なり経典のようなものが無く、当時のあり方を知るのは難しいです。
本書ではそんな神社の歴史やそこに祀られている神々の成り立ちを紹介しています。
神社のあり方は歴史の経過とともに変わっていくのが興味深かったです。
また、本書で取り上げている神社の中で興味深かった二つの神社を簡単に紹介します。
※ここでは簡潔に紹介しますが、本書では神々との関わりから時代背景まで詳しく記載されています。
なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか [ 島田裕巳 ] |
歴史上の人物「菅原道真」を祀った天神
一つは「天神」です。
天神は神社の中でも歴史上の人物「菅原道真」を祀っています。
簡単に祀られるまでの経緯を説明します。
菅原道真は無実の罪で太宰府に左遷させられその地で亡くなりました。
道真の死後、京では疫病が流行り数々の厄災が降りかかります。
それを道真の怨念だと考えた朝廷は左遷の詔を解き、元の右大臣の役職に戻しました。
その後、厄災は道真が起こしたと訴える僧などが現れ、道真の墓所である太宰府を「太宰府天満宮」として祟り神として道真を祀るようになりました。
祟り神として恐れられていた道真ですが、時代の変化とともに数々の伝説と融合していきます。
道真を祀っている神社に行くと牛の像があると思います。
その理由は様々あり、道真の生まれた日と亡くなった日が同じ「丑の日」だったからという説と、太宰府に道真の墓を築いて埋葬しようとした時に、車を引いていた牛が動かなくなったため、という説などがあります。
その他「飛梅伝説」などがあり、天満宮は梅の名所となっているところが多いです。
そのため、神社の各所で梅の紋が見られます。
神社は時代の経過とともに様々なものと融合していきますが、実際の人物を祀っている天神ではより歴史と密接に関わっているので神社の成り立ちがよくわかります。
権勢を極めた藤原氏の氏神「春日」
もう一つは「春日」です。
藤原氏の氏神である「春日神」は実態がはっきりしない神で、また記紀神話にも登場しない。
本書では春日神の正体を五柱の神々としている。
基本的には
・武甕槌命
・経津主命
・天児屋根命
・比売神
の四柱が本殿で祀られています。
それとほぼ同列の存在として若宮神社に
・天押雲根命
が祀られており、合わせて五柱としています。
この五柱の神々は記紀神話に登場しその一柱の天児屋根命は中臣連の祖神とされている。
中臣鎌足は藤原氏の祖先なので、天児屋根命は藤原氏の氏神に当たる。
他の神々も藤原氏と関わりがあるので、それぞれをまとめたのが春日神とされているそうです。
また、春日大社にいる鹿も五柱の神々と関係しています。
鹿がいる理由は、鹿島神社から勧請(神仏を迎えること)された武甕槌命の使いが鹿だからとされる説など諸説あります。
藤原氏の権勢とともに春日大社も発展し、藤原氏の氏寺である興福寺とも繋がって行きます。
それにより藤原氏は氏神と氏寺を使って大和国全体を支配下におきます。
神社や寺がその時代の政治・経済の基盤の一部を担っていたのがわかり、興味深かったです。
本書が取り上げている神社
八幡
天神
稲荷
伊勢
出雲
春日
熊野
祇園
諏訪
白山
住吉
なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか [ 島田裕巳 ] |