読了本
新撰組の副長 土方歳三の一生を描いた歴史小説【燃えよ剣】
有名な新撰組の副長である「土方歳三」を描いた小説。
その人物像が細かく描写した読み応えのある内容でした。
田舎剣士が最期は徳川方を指揮し戦う姿には、幕末の時代を象徴するような奇妙な機会の巡り合わせを感じました。
掲載日:2016年11月27日
概要
新撰組の「土方歳三」の一生を描いた物語。
一般的には「鬼の副長」と呼ばれる恐ろしいイメージで語られますが、この小説では土方歳三の人物像を細かく描写しており、彼の行動原理などをしっかりと説明しています。
下手ながらも俳名を持ち俳諧を楽しんだとも描かれており、多彩な土方像を感じられる良作です。
小説なのでいくつかの創作はありますが、人として当然の怒り、喜び、悲しみや恋など、土方歳三の「感情」がありありと伝わってきました。
燃えよ剣(上巻)改版 [ 司馬遼太郎 ]
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燃えよ剣(下巻)改版 [ 司馬遼太郎 ]
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あらすじ
時代は幕末、尊王攘夷思想が高まる世の中で江戸幕府への不満から京の治安が悪化していきます。その治安維持のために江戸から剣術に自信のある者をかき集め京都へ登らせる計画が持ち上がり、武蔵国多摩郡にある天然理心流道場の近藤勇、土方歳三、沖田総司などが参加します。
この集められた「浪士組」は清河八郎が徴募したもので、京に着くと尊王攘夷の先鋒となるべきだと説き、江戸帰還を命じます。
しかし、芹沢鴨や近藤勇一派などはその考えを受け入れず京に残留することにしました。
ただ、残った浪人を養うにはお金がいるため、幕府に掛け合います。
ここから芹沢鴨の政治手腕が発揮され、最終的に「会津藩預かり」となり、「壬生浪士組」と名乗るようになりました。
幕府に認められる存在になったのですが、その後様々な対立が続きます。
会津藩預かりとなる立役者だった芹沢鴨の粛清し、隊名を「新撰組」と改めました。
そして、浪士組の時代から近藤一派と行動していた山南敬助が「江戸へ行く」と置き手紙を残し脱走しました。
小説では山南敬助と親しかった沖田総司が後を追いかけ連れ戻させています。
新撰組の隊規は厳しく、脱走者には死罪が加えられるので、昔馴染みでも容赦なく切腹が命じられました。
また、近藤勇の道場に入門していた藤堂平助の勧めによって参謀兼文学師範として伊藤甲子太郎が入隊しますが、考えが合わずに伊藤一派を暗殺(油小路事件)をしました。
この暗殺事件の後に伊藤の遺体を奪還しようとした残党を新撰組は待ち伏せし、戦死させています。
殺された中には藤堂平助もいました。
感想
激動の幕末時代には田舎の剣術家が最期は徳川方の指揮したりと、出自に関わらず歴史に名を刻む人物が多く現れたと感じます。
土方歳三は、不器用な男が自分の活きる場所で生き抜くために、ただ必死になっていたと感じました。
また、あまり歌の内容は良くないが、俳句の趣味を描いたりと、人間らしさが随所に見られるのもこの小説の面白味でもありました。
京都に新撰組にまつわる場所が多く残っているので、小説と共にその足跡を訪ねるもの面白そうです。
実際に油小路に行った際に地元の方が、伊藤甲子太郎の遺体を引きずった場所を教えて頂きました。
現代に住んでいる方たちにも歴史的な事象が浸透していると感じました。
燃えよ剣(上巻)改版 [ 司馬遼太郎 ]
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燃えよ剣(下巻)改版 [ 司馬遼太郎 ]
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